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2004年11月12日 (金)

小論文問題批判

・神山睦美『思考を鍛える論文入門』(ちくま新書・720円)
出たばかりの本である。この本の趣旨からはずれるが、おもしろい箇所を見つけた。
最初の方に、ある大学(?)の2001年の入学試験の小論文の問題が紹介されている。
[設問]なぜ人を殺してはいけないのか?この問いに答えがある人はその答えと理由を、答えがないと考える人もその理由を論理的に述べよ。(600字)
いろいろ考えさせられる。次のような解答をしたらどうなるのだろう。
------
この設問は悪問である。以下、その理由を述べる。
第一は、この設問に対して解答できない人が、少なくとも論理的には存在するからである。
この設問では、解答すべき人として「答えがある人」と「答えがないと考える人」を指定している。この二分法が間違っている。
「答えがある人」には「答えがない人」が対応しなければならない。逆に「答えがないと考える人」に対しては「答えがあると考える人」が対応しなければなら ない。「答えがある人」と「答えがあると考えている人」は同じか。また「答えがない人」と「答えがないと考えている人」は同じか。どちらも違う。
「答えがある人」を考えてみる。「答えがある人」は当然答えがあると考えるだろうから「答えがあると考える人」である。では「答えがない人」はどうか。 「答えがないと考える人」だけではなく「答えはあるはずだと考えるが答えがみつかっていない人」つまり「答えはあると考える人」でありかつ「答えがない 人」も存在する。つまり次の三種類の人が存在することになる。
a.答えはあると考えており答えがある人
b.答えはあると考えているが答えがない人
c.答えはないと考えている人(この人には当然答えがない)
bは解答する義務がないことになる。bが解答するとすれば次のように書く以外にない。
「私は答えがあると考えていますが、今のところ答えをみつけていないので解答できません」
bは常識的に考えても実際に存在する人である。世の中には「答えはあるはずだが答えがわからない」ことはいくらでもある。だから研究者という職業が成り立 つのである。
この設問が悪問である第二の理由は、悪文だからである。
「この問いに答えがある人はその答えと理由を、答えがないと考える人もその理由を論理的に述べよ」
この文を二つに分けて考えてみる。
A「この問いに答えがある人はその答えと理由を(論理的に)述べよ」
B「この問いに答えがないと考える人もその理由を論理的に述べよ」
文Aの「ある人は」を受けるのは、「論理的に」からか「述べよ」からかがあいまいである。この場合、「論理的に」の前に読点があったほうがよい。さらに 「考える人も」の「も」の使い方がおかしい。「も」は同一あるいは類似したものを指す助詞である。この答えがある人には「答えと理由」を求め、答えがない と考えている人には、「その理由」を求めている。この場合、「答えと理由」と「その理由(答えがないと考える理由)」は異質のものである。したがって「論 理的に述べよ」が同一ということになる。しかし、このような入試の問題では、論理的に述べなければならないのははじめからわかりきったことである。「同 一・類似」を強調する意味はない。両者に求めていることの違いを示すべきである。
「この問いに答えがある人はその答えと理由を、答えがないと考える人は答えがないと考える理由を、論理的に述べよ」
これでもおさまりわるい。もっとわかりやすくするためには次のようにする。
「この問いの答えがある人は、その答えと理由を論理的に述べよ。また答えがないと考える人は、答えがないと考える理由を論理的述べよ」
「論理的に」が重なって目障りだがもとの文だと、答えがないと考える人だけ「論理的に」述べないといけないようにもとれる。あいまいさは残さないほうがよ い。それでも第一の理由によって良問とはならない。bに属する人に対する設問を考えなければならないが難しい。
「答えがあると考えているが現在は答えが見つかっていない人は、答えがあると考える理由を論理的に述べよ」
------
このような解答をした受験生がいたらおもしろい。
小論文の出題はこわい。出す側の論理性が問われるからである。なお、「なぜ人を殺してはいけないのか」については、前年に小浜逸郎氏の同名の本が出て、 ちょっとしたブームになった。また、柳美里氏もこれについて述べている。読書をしている人なら、朝飯前の問題であった。
・小浜逸郎『なぜ人を殺してはいけないのか』(洋泉社新書y・2000年・680円)
・柳美里『仮面の国』(新潮新書・2000年・438円)

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