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2007年4月 5日 (木)

負けるが勝ち

負けるが勝ち
「負けるが勝ち」。好きな言葉だが、私にはなかなかできないことだ(結局は負けるのだが)。

日本史上最大の「負けるが勝ち」が、明治維新時の江戸城無血開城である。官軍の江戸城総攻撃を前にして、開城を条件に官軍参謀長の西郷隆盛に総攻撃の中止を申し出たのが勝海舟である。そのおかげで、江戸が戦火に包まれることもなく、将軍や多くの幕臣が命を落とさずにすみ、さらには幕臣たちは明治の新政府にも取り立てられることになった。勝海舟には先を見通す力があったのである。

板倉聖宣『勝海舟と明治維新』(仮説社・2000円)

著者の板倉氏は、私の最も尊敬する研究者の一人(ちょっと英語っぽい表現)である。前の職場で2年間ご一緒させていただいた。言わずと知れた仮説実験授業の提唱者である。定年後は「私立板倉研究室」を設立して研究を続けてられている。

板倉氏の専門は科学教育だが、歴史教育についても数多くの著作がある。この『勝海舟と明治維新』もその一つである。中高校生でも読めそうな歴史読み物である。

この本が普通の歴史書と異なっているのは、勝海舟の伝記にとどまらず、自身の調査を含む経済のしくみや人口統計を織り交ぜながら、明治維新の全体像を映し出していることである。この本を読めば、江戸時代の租税(年貢)のしくみやそれが行き詰まっていった理由が、子どもでも分かるだろう。数時間で読めるので、大人子どもを問わずぜひ1冊おすすめしたい。

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