音楽ソフト
ゼミのI君が、最近の「音楽ソフト」と「音楽配信」の販売の状況について報告してくれた。音楽ソフトの売れ行きが落ち、音楽配信が増加しているという報告だったのだが、それは推測できたことだ。「音楽ソフト」とはCDやビデオ、「音楽配信」とはインターネットを通して音楽を有料で配信することである。
この「音楽ソフト」といういい方には違和感がある。私たちの中学生・高校生の頃には、音楽と言えばレコード(「アナログ」という言葉もなかった)で、45回転のドーナツ盤(EP)、33回転のLP盤だった。ドーナツ盤がだいたい400円、LP盤が2000円というのが標準的な価格であり、LPは県立高校や国立大学の1ヶ月の授業料(年間で12,000円)よりも高かった。おまけにレコードは聴くたびにすりへっていった。だから何度も聴くのがこわかった。「今日は1度だけにしておこう」と、聴き惜しみをすることもあった。とても大切に扱った。
この時代は、レコードはモノであったのだ。音楽を買うとはレコードというモノを買うことだったのである。つまりレコードという形をした「ハード」を買うことだったのだ。それから20年ほどして、CDの時代がやってきた。最初のうちはCDはレコードに代わるものとして、レコードと同じように扱われてきたが、コンピュータやインターネットの普及によって、CDは単なるメディアの一つすぎなくなった。素人でも簡単にCD録音ができてしまうようになった。こうなると、モノとしてのCDには何の価値もなくなってきた。CDではなく中に入っている音楽情報、つまりソフトにしか価値がなくなったのだ。だから「音楽ソフト」なのである。
しかし、考えてみると、「音楽ソフト」という言い方はむしろ音楽配信に使うほうがあっている。音楽配信は形のある固いもの(ハード)は何も使用せずに音楽を提供するからである。そしてCDやビデオの中に録音されている音楽はソフトだが、CDやビデオそのものはハードである。CDやビデオと音楽配信の違いは音楽というソフトを提供するメディアの違いに過ぎないのである。
いずれにしても、モノ(ハード)としてとしてCDやビデオの価値は下がる一方である。それだけならまだよいとしても、その陰でソフトとしての音楽の価値も下がり、それに伴って音楽家の価値さえも下がっているのではないか。私は危機ではないかと感じているのである。
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エバコスです。◯◯に該当するでしょうか?(笑)
そもそも、レコードという言葉は「記録」ってことですよね?
レコードは「演奏」を「記録」したものであるわけですよね?
じゃあ「音楽」はどこにあるのかというと・・・
音楽は次の瞬間に消えてしまうものという概念に照らし合わせると、
音楽は「生演奏」で、音が発せられた時にあるのだ、と思っています。
投稿: ebakos | 2009年1月30日 (金) 11時39分
私は子ども時代(幼児~小学生あたり、昭和40~)、
EPと同じサイズ(17cm)のLP(クラシック)に親しんでいました。
価格は当初400円程度、最終的には700円。
フォノシートも多く購入しました。
あと45回転でドーナツ盤でない17cmレコードも。
当時のコレクションも含み、私は1000枚以上のレコードを
所有していますが、今もこれらのレコードが現役です。
CDはあまり持っていません。
投稿: 石原真 | 2009年1月30日 (金) 12時00分
> エバコスです。◯◯に該当するでしょうか?(笑)
さあ、どうでしょうか
コメントが投稿されたあと、私が判断して公開するかどうかを決めます。
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もちろん、私の意見に反対という理由だけで公開されないということはありません。
投稿: 吉田孝 | 2009年1月30日 (金) 13時01分
>EPと同じサイズ(17cm)のLP(クラシック)に親しんでいました。
それを忘れていました。私が中学校・高校時代(昭和40年前後)でした。
一枚の中に、ベートーヴェンの第五が全曲入っていました。
・・・・ただ、あまりにも詰め込みすぎて、となりの溝の音が聞こえてしまいました。
つまり、「ジャジャッジャジャーン」とはじまる2秒くらい前に、かすかに「ジャジャジャジャーン」と聞こえてしまうのです。
投稿: 吉田孝 | 2009年1月30日 (金) 13時05分
>>一枚の中に、ベートーヴェンの第五が全曲入っていました。
どんなにはやく演奏したとしても、30分は絶対に越えてますよねぇ…
私も、今何枚かの録音時間をざっと調べてみたのですが、
片面12分を越えるのは珍しいようです。
そういえばLPには25cmというのもありましたね。
投稿: 石原真 | 2009年1月30日 (金) 13時58分
エバコス さん、
>>音楽は「生演奏」で、音が発せられた時にあるのだ、と思っています。
音楽は、記憶や、読譜によっても生じていると思います。
記譜することや、楽案を思い浮かべるのも音楽でしょう。
活字になって印刷されたものでも文学といえる、というのと比較
すると、録音された音楽は生演奏よりも少し弱いような気もしますが
録音こそがオリジナルだ、といえる音楽(作品or演奏)もあるのでは。
投稿: 石原真 | 2009年1月30日 (金) 14時09分
ebakosです。
もちろん、ショーペンハウエルの時代と今は違うわけですが・・・(笑)。
もちろん、レコードやCDの中に音楽が無いとは言いません。
楽案にも音楽はあります。
スタジオでつぎはぎしながら作る音楽も音楽だと思います。
ただ実演家からすると「生演奏」が一番純粋に音楽なんじゃないかなと思うわけです。
投稿: ebakos | 2009年2月 2日 (月) 20時10分