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ポトスライムの舟

私小説というものをほとんど読まないが、話題になってる作品は気になる。20年度下半期芥川賞受賞作、津村記久子「ポトスライムの舟」(『文藝春秋』3月号)を読んでみた。

主人公の長瀬由紀子は29歳。工場の契約社員で月給は13万8千円。夜は、友人の店で3時間働く。時給は850円。大学時代の友人と食事をするその食事代も惜しいと思う。そんな主人公の日常が淡々と描かれている。

あるNGOの主催する世界一周のクルージングの代金が163万円。自分の工場の年収とほぼ同額である。これに参加したいと思っているが、実現しそうにない。

先が見えない。希望がない。どうしようもなく暗い日常である。特別に魅力的な主人公でもない。それでも読んだ後はさわやかな気持ちになる。今やこのような日常は特別なことではなく当たり前のことである。私の身近にもこのような状況の人はいくらでもいる。それでもうんざりしないのは、作者の才能か。

この小説が書かれた時に比べると現在の経済事情はもっと悪化している。このことがわかっていたら、この小説はもっと別の展開をしていたかもしれない。選考委員の一人の小川洋子氏は書いている。

「津村さんはこれからどんどん書いていくことだろう。それは間違いないことであるし、一番大事なことである」

そう思う。

※私は、「ポトスライム」という観葉植物があることを知らなかった。おそらく、何度もきいたことのある言葉だろうし、その観葉植物も見たことがあるに違いない。しかし、植物そのものを意識することも名前を知りたいと思うこともない。感性のなさの所以かもしれない。

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コメント

おはようございます。いつも楽しく拝見しています♪。
こちら、日一日春めいてまいりましたが、
ここ2,3日、寒の戻りもあって寒い朝を迎えてます。
弘前は、まだまだ厳しい寒さでしょうね。

ポトスライムは、丈夫で育てやすく、水が大好き!
私もよく育てました。
リビングに差し込む光を受けて、グングン成長し、
陽が当たって透ける葉は、光沢があって特に美しく感じます..。
「ポトスライムの舟」(『文藝春秋』3月号、
珍しく家人がこのたび購入してきましたので、私も読みました。

>それでもうんざりしないのは、作者の才能か。

本当にそうですね。
丁寧な描写に素直な感性、気負いもなく、好感が持てました。
爽やかな、といったらオーバーかもしれませんが、
それでも、生きることに期待したい(できる)そんな作品でした。
彼女の次の作品、是非もう一度読んでみたい!
そう思わせる本でした。


投稿: はね駒 | 2009年2月23日 (月) 10時15分

はね駒さん。いつもコメントありがとうございます。
ポトスライム、そんな育てやすいなら私でもできるでしょうか。今度買ってみようと思います。

投稿: 吉田孝 | 2009年2月24日 (火) 08時50分

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