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2009年5月27日 (水)

学習指導要領の英訳

うっかり見落としてしまっていたのだが、文部科学省のHPに小学校学習指導要領の英訳(仮訳)が出ている。私は英語についてはからっきし自信がないので、論評などはできない。それでも、どうしても気になることがある。

1 目標の英文

小学校音楽の目標は、次の通りである。

表現及び鑑賞の活動を通して、音楽を愛好する心情と音楽に対する感性を育てるとともに、音楽活動の基礎的な能力を培い、豊かな情操を養う。

 これを分解すると次のようになる。

 ・音楽を愛好する心情と音楽に対する感性を育てる
 ・音楽活動の基礎的な能力を培う
 ・豊かな情操を養う

 「育てる」「培う」「養う」という3つの動詞が使われている。同じ文中で言葉をかえる場合、それなりの理由があるはずである。この文は従前の目標を踏襲しているので、最初にこの文を作った人の意図はわからない。しかし微妙なニュアンスの違いがある。試みに動詞の順を変えてみよう。

音楽を愛好する心情と音楽に対する感性を培い、音楽活動の基礎的な能力を養い、豊かな情操を育てる。

落ち着きの悪い文になる。つまり、言葉を変えることにはそれなりに意味があるのだ。この目標を英訳するとどうなるだろう。今回の仮訳では次のようになっている。

To encourage pupils to cultivate their sentiments, fundamental abilities for musical activities, a love for music as well as a sensitivity toward it, through music-making and appraising.

 つまり「育てる」も「培う」も「養う」もすべて "encourage pupils to cultivate" になってしまったわけである。整理すると次のようになる。

 to encourage pupils to cultivate their sentiments
  to encourage pupils to cultivate fundamental abilities
  to encourage pupils to cultivate a love for music as well as a sensitivity it

"cutivate fundamental abilities" には、意味的にかなり違和感を感じるのだが、私の英語力のせいだろう。 "cultivate a love for music" も文法的に気になるのだが、はっきり指摘する自信がない。

いずれにしても、三通りの日本語を一通りの英語で表すことができたことになる。これは日本語の語彙の豊かさによるものなのか、それとも英語の意味の豊かさによるものなのか。英語の苦手な自分がはがゆい。

2 表現と音楽づくり

今回の学習指導要領から、従前の「創作」が「音楽づくり」という名称に変わった。これ自体はわかりやすくてよいのだが、少し危惧していることがあった。それは、次のようなことである。

「創造的音楽学習」(Creative Music Making)」の主張をしている人たちの間では、"Music Maiking"(直訳すれば「音楽づくり」)とは、音楽表現全体(つまり歌うことや楽器を演奏することを含む)を表し、これまでの「創作」にあたるものは "Creative Music Making" である。だから、「音楽づくり」と言った場合広い意味での "Music Making" つまり歌うことや楽器を演奏すること全般を含む表現活動全体を表すことばと、混同されやすいのではないか。

果たして仮訳では、上の目標に見られるように、「表現と鑑賞」を通しては、"through music-making and appraising" と訳された。では、「音楽づくり」はどうなったか。"createve music making"である。各学年の内容の一部は次の通りである。

 A 表現
  (3)音楽づくりの活動を通して、次の事項を指導する。
     (4)表現教材は次に示すものを取り扱う。

 これが、仮訳では次のようになっている。 

(3) [Creative Music Making]
 The following should be taught through creative music making.
(4) The teaching materials for music-making should contain the following.

整理すると次のようになる。

  表現    Music-Making
  音楽づくり Creative Music Making

一般には理解されにくいだろう。これは、特殊な用語法ではないだろうか。Music-Makingが「表現」という広い意味をさす言葉だとすれば、「創作」を「音楽づくり」とするような紛らわしい使い方をするべきでなかった。

まだ中学校や高等学校の学習指導要領の英訳は発表されていないが、中学校や高等学校の「表現」も"Musci-Making"と訳すのは問題だ。

そのほかにも、気づいたことはたくさんあるのだが、はっきり指摘する自信がない。

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コメント

先生、ご無沙汰しております。

これをすごい探してました!
先生ありがとうございました!!!

おおおおおおおおーーーーーーーーー!

無事だったか。よかったよかった。

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