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続・続「主われを愛す」考

作詞家の故阪田寛夫氏の講演をまとめた『童謡の天体』(新潮社・1996)の中に、「はじめての賛美歌」という講演が掲載されている。そこで、この「主われを愛す」のことが詳しくのべられている。

この歌の元の歌詞は次の通りである(Anna B. Warner 作詞) 。

Jesus loves me, this I know,
For the Bible tells me so;
Little ones to Him belong,
They are weak, but He is strong.

Yes, Jesus loves me!
Yes, Jesus loves me!
Yes, Jesus loves me!
The Bible tells me so.

この歌には、日本に伝えられた明治の初期からいろいろな日本語訳がつけられてきたそうだ。一番古いのが次の「耶蘇我を愛す」である。

耶蘇(エス)我を愛す 聖書にそ示す
帰すれば子たち 弱きもつよい
はい耶蘇愛す はい耶蘇愛す
はい耶蘇愛す そう聖書に示す

「我(われ)」を一音符の中に入れなければならないので、少し窮屈だ。

阪田氏によると「一音符に一音ずつおさめる今の形に落ち着いたのが、明治36(1903)年発行の賛美歌」である。阪田氏はこの今の形の箇所について次のように語っている。

しかしなだらかに訳語が落ちついて行くのと反比例して、歌の意味が消えて行く過程も、同時に読み取って頂けたと思います。牧師さんには叱られるかも知れませんが、現行の「主われを愛す」は、一節の歌詞だけなら、たとえば主織田信長をたたえる、われ木下藤吉郎の歌であっても少しも差し支えありません。

主われを愛す 主は強ければ
われ弱くとも 恐れはあらじ

阪田氏の言う通りである。また英語の原文とも意味が相当異なっている。紋切型に感じるのはこのせいかも知れない。

ところで、1997年に発行された『賛美歌21』には、この「主われを愛す」の歌詞とともに、口語訳の歌詞が併載されている。

愛の主イェスは 小さいものを
いつも愛して 守るかたです。

聖書は言う、イェスさまは
愛されます、このわたしを

賛美歌は歌い出しの歌詞を歌のタイトルにして呼ぶ慣習があるので、こうなると「主われを愛す」ではなく、「愛の主イェスは」ということになる。

「主われを愛す」という訳は、ルーテル、バプティスト、聖公会などの他の教派の賛美歌集、聖歌集などでも共通して採用されてきた。そしてほとんど1世紀以上も同じ歌詞で歌いつがれてきた。物心ついた時から歌って来た人もいるだろう。おそらく、この新しい歌詞には抵抗があるだろう

※「愛の主イェスは」の歌詞が併載されている「賛美歌21」を使っているのは、日本キリスト教団で、他の教派の賛美歌集・聖歌集ではたぶん「主われを愛す」で統一されている。(「たぶん」と言うのは全部の教派を知らないし、全部は調べられないから)。

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