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小学唱歌集とクリスマス

巷間では、クリスマスの音楽が聞こえてくるようになった。

明治14(1881)年~17(1884)年に発行された『小学唱歌集』(初編-第三編)と讃美歌との関係については安田寛氏の研究『唱歌と讃美歌』(音楽之友社、1993)が知られているが、その旋律が現在でもクリスマス賛美歌として歌われている曲が2曲ある。

一つは「雨露」(初編第二十九)。原曲はシチリア民謡であり、日本では「いざうたえ」の歌詞で歌われている(讃美歌21-260、日本聖公会聖歌集 82)。小学唱歌集の歌詞は次の通りである。

雨露におほみやはあれはてにけり
みめぐみに民草はうるほいにけり
かくてこそ今の世もかまどのけぶり
み空にもあまるまでたちみちぬらめ

飢えこごえなきまどふ民もやあると
身にかへてかしこくもおもほたあまり
あられうつ冬の夜にぬぎたまはせる
大御衣(おほみそ)のあつきその御こころあはれ

民の家のかまどから煙が出ていないのを見て年貢を減じることにしたという、仁徳天皇にまつわる「かまどのけむり」(明治時代は史実として教えられた)を題材にした歌詞である。
芸大図書館の「音楽取調掛時代各種資料」の中には、この曲の指導法まで残っている。

もう一つは「栄ゆく御代」(第二編第四十五・初編からの通し番号)である。原曲はクリスマスの代表曲ともいえる Adeste Fidelesである(讃美歌21-259「いそぎ来たれ、主にある民」、日本聖公会聖歌集 72「み使いの、主なるおおきみ」)。唱歌集の歌詞は次の通りである。

さかゆく御代に生まれしも
思へば神のめぐみなり
いざや児等神の恵を
ゆめなわすそゆめなわすれそ
ゆめなわすれそときのまも

恵も深きかみがきの
みまへのさかきとりもちて
ちはやぶるかみの御前に
うたひたまはしうたいたまはし
うたいたまはしよもすがら

神の恵みを一時もわすれてはならない。
もちろんこの神はキリスト教でいうところの「神」ではない。かつてある総理大臣が言った「日本は天皇を中心とする神の国」の「神」である。結局、代々続いてきた天皇を讃美する歌なのである。ただ、そういう解釈をしないならば、讃美歌として歌ってもそのまま通用しそうである。

クリスマスの讃美歌の旋律で天皇を讃美する。何か恐ろしい話である。

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音楽教育」カテゴリの記事

コメント

リンク先のPDFが読めないのは何らかの制限がかかっているからなのでしょうか?

投稿: 北山敦康 | 2009年12月 5日 (土) 17時16分

北山様

何も制限はかけてないのになぜでしょうね。調べてみます。

投稿: 吉田孝 | 2009年12月 5日 (土) 17時22分

北山様

リンク先データを画像に変えてみました。
今度は読めると思います。

投稿: 吉田孝 | 2009年12月 6日 (日) 07時44分

今度は読めました。・・・少々粗いですが。
何でPDFは読めなかったんでしょう?

投稿: 北山敦康 | 2009年12月 6日 (日) 23時23分

画像は画素数を上げれば細かくすることができますが。
もともとがうすいのです。

私は、当時発行された唱歌集の現物をもっていますが、国会図書館からデジタル画像が公開されています。

http://kindai.ndl.go.jp/BIBibDetail.php

投稿: 吉田孝 | 2009年12月 7日 (月) 05時21分

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