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ジャーマン式とバロック式(リコーダー)

今週は、大学は入試週間。私は5日(金)、7日(土)が当番になっている。当番でない日は、大学に行ってもしょうがない。じゃまになるだけだ。とわがままな決めつけをして、今日、明日は休んで遊びに行く。

相撲協会の理事選挙・・・またひどい実態が出てきた。

今日は節分。恵方巻とかいう巻き寿司を食べる習慣があるらしいが、そんな習慣を知ったのはここ10年くらいだ。だれが考え出した商売だろうか。

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さて、ある小学校の先生から、次のようなメールをいただいた。おもしろい話題なので、私の返事と合わせて転載する。個人情報が分からないように少し編集してある。    

今年度私は3年生を担当しています。

本校では、ソプラノリコーダーは以前からバロック式を使用しています。バロック式を使っていて、いつも思うのは、ファの運指が3年生の児童にとってとても難しいことです。

すぐ押さえれるようになる子もいますが、なかなかうまくかない子が多いのです。

子どもたちも苦労しているようです。毎日少しずつ取り組ませてもっと何回も経験させることも大事だと思いますが、この頃ジャーマン式を選択してもよいのではないかと考えるようになりました。

バロック式とジャーマン式とでは、音色がやはり違うのでしょうか。小学3年生からソプラノリコーダーを導入するには、どちらのリコーダーを選択すべきなんでしょうか。

私は、次のようにお返事をしておいた。

リコーダーになぜドイツ式(ジャーマン)とイギリス式(バロック)があるのかについては、次の本を読まれるようおすすめします。とても興味深く読める本です。

安達弘潮『リコーダー復興史の秘密-ドイツ式リコーダー誕生の舞台裏-』(音楽之友社)

絶版になっていますが、図書館などには置いてあると思います。

さて、ジャーマンかバロックかという問題です。中学校ではアルト・リコーダーの指導が行われます。アルトへの移行を考えるとバロックがよいと思っています。ジャーマンのアルトはかなり不自然です。

ジャーマンの一番の欠点は、上のF#の音が出にくいことです(出ないことはありませんが、一発ではなかなか決まりにくい音です)。ジャーマンだとB(シ)の音になります。ソプラノ・リコーダーの場合はト長調、アルト・リコーダーの場合はハ長調の音階が難しいことになります。したがって、中学校でジャーマン式アルト・リコーダーを使うことはほとんどありません。

リコーダーのうち、ソロ楽器として一人で楽しめるのはアルト・リコーダーです。せっかくリコーダーを学習するのなら、アルト・リコーダーにつなげるようにしたいものです。私は最初からバロックではじめるほうが良いと思います。

バロック式のソプラノ・リコーダーの一番の難点は、先生が言われるようにFの音です(別に難しくはないという先生もいらっしゃいます)。なぜ難点になるかというと、ハ長調の曲を取り上げるからです。ハ長調の曲を取り上げればFの音が出てきますからここで子どもが苦労するのは当たり前です。しかし、ト長調の曲は簡単です。F#は音も出やすい上に、指づかいも簡単です。

私は、ここでは発想を変えて、まずト長調の曲から入ることをおすすめします。ト長調だとFより先にF#を学習することになります。まずト長調の簡単な曲を集めて指導されたらいかがでしょうか。

ト長調というと難しそうですが、リコーダーの入門時にはまず左手だけの曲を演奏しますね。「メリーさんの羊」「ちょうちょう」「ぶんぶんぶん」。これらは五音だけで演奏できますが、この場合使う音は、GABCDです。F#は出てきませんが、ト長調の曲です(私はこれらの曲を「隠れト長調」と呼んでいます)。ト長調から入るというのは、理にかなっています。上の著者の安達先生もまずFを避けることをすすめています。ト長調でたくさんの曲を演奏できるようになれば、簡単にFに入れるはずです。(ト長調の曲を同じ運指でアルトで演奏すればハ長調になります)。

ただ一つ言えることは、子どもは楽器が好きになりさえすれば、どんな努力もいとわず自分でできるようになろうと努力します。だからFの音でも好きにさえなればへっちゃらです。また、かりに小学校でジャーマンを使っても、中学校で簡単にバロック式のアルトに乗り換えることができます。したがってあまり深刻に考えることもないと思います。ジャーマンかバロックかはあまり大きな問題ではありません。ただ、指導の順序を少し変える必要があるというくらいです。

リコーダーの授業で子どもがつまずくのは、それ以前のところにあるようです。左手の段階でつまずいたり、左右が逆になっていたり、右の親指の位置が決まっていなかったり。何よりも、子どもがいやいやながら吹いていたり・・・。先生の教室ではそんなことはないでしょうが。

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コメント

私はリコーダーが大好きで、楽器もいろいろと持っています。
小学校ではジャーマンばかりかと思っていたら、バロックの学校も沢山あると知り、
新鮮な驚きとともに、その見識の高さに心強く感じたものです。

ところで、
ソプラノリコーダー(ジャーマン)の上のF♯とは[θ/123-5-7]が標準的な運指でしょうか?
うちの子が使用した楽器では容易にこの音が出るものの、運指そのものが難しいですよね。
私が所有しているアルトのうち、ジャーマンの1本はこの運指ではこの音が出ません。
この楽器を使用するときは仕方なく[θ/123(4半)---]で代用しています。

投稿: 石原真 | 2010年2月 3日 (水) 19時22分

石原さん

アルトのジャーマンは私は持っていませんが、前に吹いたときはこの[θ/123-5-7]で、Bの音は出ませんでした。アルトは無理なのではないでしょううか。ソプラノには、出やすいものと出にくいものがあります。何故でしょうね。不思議です。ジャーマンが教育用以外は手元にないのです。

[θ/123(4半)---]
これは一つのアイデアですね。まあ、たまに出るのならよいですが、しょっちゅう出るとアウトですね。

投稿: 吉田孝 | 2010年2月 4日 (木) 15時40分

私の持っているジャーマン式アルトリコーダーは,右手人差し指のトーンホール(4)が小指と同じようなダブルホールになっています。・・・だからといって使いやすくなるわけではなく,ジャーマン式のアルトリコーダーの存在意義がないことには変わりないのですが。

投稿: 北山敦康 | 2010年2月 5日 (金) 09時14分

> アルトリコーダーの存在意義がないことには変わりないのですが

ジャーマン式ソプラノ・リコーダーの存在意義
Fが簡単

ジャーマン式アルト・リコーダーの存在意義
B♭が簡単

投稿: 吉田孝 | 2010年2月 5日 (金) 17時00分

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