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立つ瀬がない

藤森毅『教育の新しい探求・今こそ「まともなルールを」』(新日本出版社・1400円) 

藤森毅氏は、日本共産党文教委員会責任者。この本は、「日本共産党の雑誌に発表した論文を素材としている」本である。現在、「建設的野党」を掲げる共産党の教育改革論である。
共産党のいう「まとまなルール」とはどんなものだろうか。モデルにしているのは社会主義国ではない(社会主義国はもはやモデルにはなりえない)。まず、もっとも「子育てしやすい国」として北欧のデンマークをとりあげる。家族が夕食の食卓をいっしょに囲むことの少ない日本と比べて、デンマークは「夕方には一家全員そろうのが基本です」と紹介している。

親の働き方がまともになり、夕食を一緒に食べられ、子どもをお風呂に入れ、一緒に遊んで寝る前にゆったり本をよみきかせることができる、デンマークでは当たり前の過ごし方が少し保証されただけで、日本の子どもの状態は相当に変わると思うのは私だけではないと思います。

すばらしい。日本の子どもたちがすべてこうなったら、日本の教育はとてもよくなるだろう。ただ、これを読んで、隔世の感を覚えたのは私だけだろうか。今からもう40年ほども前のことだが、私が「結婚して、子どもができ、家族で夕食を食べ、子どもと遊んで、絵本を読んであげて」という将来の夢を語ると、「プチブル的だ!」となじった人は共産党の活動家だったような気がする。もちろん、その時と違って、政策が「まとも」になったのならば、とても良いことである。

また、藤森氏は学習指導要領については、次のようにいう(原文は自民政権の時代に書かれたものらしい)。

自民党政府のもとでの「指導要領」は、コンドルセ(注・フランス革命時の思想家の一人)が指摘した権力の濫用そのものです。「指導要領」の内容を審議するのは、文部大臣が任命する中央教育審議会。その審議は文科省の役人が事実上取り仕切り、一緒に「答申」を作成し、その「答申」をうけた文部大臣は文科省の内輪で--そこには自民党の「靖国派」などの圧力もあります--最終的に「指導要領」を決定します。こうした過程からは、日々子どもを教えている先生たち、国内外で高く評価されている研究者は排除されています。これで、妥当な結論がえられるはずがありません。

そうかも知れないが、こうはっきり書かれると立つ瀬がない(泣)。

ただ、この本は、全体としてきわめてまともな本である(最後の「歴史教科書問題を考える」は、検証不足だと思うが)。一読しておく価値はある。 

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