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2010年6月30日 (水)

伊藤整

W.C.は残念だったが、これで国民全体が普通の生活リズムに戻れる。

相撲協会の賭博問題で今一番目立っている人は、特別調査委員会委員長の伊藤滋氏(早稲田大学特命教授)。78歳らしいがなかなか若々しくて歯切れがいい(ときどきフライングもする)。どういう人かと調べてみたら、都市工学の権威らしい。そして一番驚いたのが、この人が作家の伊藤整の長男だということだ。

伊藤整は、戦後間もない頃、ロレンス「チャタレー夫人の恋人」の翻訳がわいせつにあたるとして裁判で有罪になったことで有名だが、私はチャタレーは読んだことがない。むしろ数多く残した小説が好きだった。かつては新潮文庫版がたくさん出ていて所蔵していたのだが全部処分してしまった。その後、もう一度集めようと思ったのだが、ほとんどが廃刊になってしまっている。

一つだけ強烈に印象が残っているのは、戦後に書かれた「氾濫」という小説である。この小説の中心的な主題ではないのだが、自然科学の研究者である主人公は自分の研究のメモをノートではなく、データ・カードに記録していき、後にそのデータ・カードを組み合わせることによって新しい理論を生み出して成功する。このような研究の方法があるのだとずいぶん感化された覚えがある(記憶違いだったらごめんなさい。本が手元にないので)。

データ・カードといえば、梅棹忠夫『知的生産の技術』(岩波新書・1969)が有名で(この本は手元にある)、この本の出版後に研究者の間に広まった。梅棹の所属した大学名で呼ばれることもある(嫌みだ)。だが、伊藤整の「氾濫」はそれ以前の1957年刊。伊藤整は、東京工業大学の英語の教員だったので、同僚の自然科学関係者からこのようなデータ・カードの利用法を知ったのか、すでに自分で利用していたのであろう。データ・カードはこの頃から利用されていたようだ。

実は、私もこのデータ・カードを使おうとしたことがある。使ってはやめ使ってはやめることを繰り返した。結局、カードは紙くずにしかならなかった。つまり私はデータ・カードからは何ら知的生産をすることができなかったことになる。私の頭の中にはさまざまな情報が未整理のまま雑然と散らばっている(だんだん消失していく)。文献やさまざまな研究資料も雑然としたまま研究室や自宅に散らばっている。だから三流研究者なのか、三流だからこうなのかはわからない。

話しが最初に書こうと思ったこととはだいぶ違ってしまった。

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コメント

伊藤整の「チャタレー…」は、私も未読です。彼が翻訳を手掛けたジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ」も、猥褻文書として名高いですが、この不可解な書物に、良く分からないまま惹かれた時期がありました。未整理のカードや資料、どうか捨てないでくださいね。書きなぐったアイデアを20年以上あたためた末にまとめ上げた作家さんもいますから。

私はジェイムス・ジョイスは読んだことがないのですが、ユリシーズはホメロスの『オデュッセイア』の英語読みですね。少し前に「トロイ」という映画がありましたが、あのトロイの木馬作戦を考えたことになっている人ですね。

カードはもう1枚もありません。まあ、もったいないと思うほど作ったわけではありません。資料は未整理のまま箱詰めしています。

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