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とんでもございません

NHKテレビに「みんなでニホンGo!」という番組がある。6月3日放送分をビデオで観た。この日取り上げられたのは「とんでもございません」だった。

私の考えは次のとおりである。

「ございます」は「ある」「あります」の丁寧語である。
したがって「ございません」は「ない」「ありません」の丁寧語である。


では「とんでもございません」は「とんでもない」の丁寧語としてよいか。
私は反対である。


「とんでもない」はこれで一つの言葉だからである。「とんでも」と「ない」は切り離せないのである。「とんでもない」は「とんでもある」の否定形ではないからだ。もし「とんでもございません」が認められるならば、「ない」で結ばれる形容誌はみな該当部分を「ございません」に変えても良いことになる。


「もったいない」→「もったいございません」
「きたない」→「きたございません」
「幼い」→「おさございません」
「おぼつかない」→「おぼつかございまん」

ところが番組の中で、文化庁の調査官が出てきて、「とんでもございません」は国語審議会の「敬語の指針」によれば間違いでないと言っていた。さっそくその「敬語の指針」をしらべてみた。

【解説1】「とんでもございません」(「とんでもありません」)は、相手からの褒めや賞賛などを軽く打ち消すときの表現であり、現在では、こうした状況で使うことは問題がないと考えられる。

【解説2】謙遜して、相手の褒めや賞賛などを打ち消すときの「とんでもございません」(「とんでもありません」)という言い方自体はかなり広まっている。この表現は使わない方が良い、と言われる大きな理由は、「とんでもない」全体で一つの形容詞なので、その「ない」の部分だけを「ございません」に変えようとする発想に問題があるということである。したがって、その立場に立てば、「とんでもない」を丁寧にするためには、「とんでもないです」「とんでもないことでございます」あるいは「とんでものうございます」にすれば良い、ということになる。ただし、「とんでもございません」は、「とんでもないことでございます」とは表そうとする意味が若干異なるという点に留意する必要がある。問いの例は、褒められたことに対し、謙遜して否定する場合の言い方である。したがって、「とんでもございません」を用いることができるが、この場面で、「とんでもないことでございます」と言ったのでは、「あなたの褒めたことはとんでもないことだ」という意味にも受け取られるおそれがあるので、注意する必要がある。

また、例えば、あの人のしていることはとんでもないことだ、と表現したい場合には、「あの方のなさっていることはとんでもございませんね。」などとは言えないが、「とんでもないことでございますね。」などは普通に用いることができる。
http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/soukai/pdf/keigo_tousin.pdf

要は、現在はこういう言い方が広まってきているので「問題がない」ということだ。逆に「とんでもないことです」の場合は相手のいうことを強く否定することになるので使わないほうがよいということになる。

つまり、褒められて「とんでもないことでございます」と言うと、相手の言うことを強く否定することになる。だから「とんでもございません」は謙譲しているので問題はないということか。むちゃくちゃな論理である。そんならもともと、褒められたときにこんな言葉は使わないことだ。本当に否定したい場合に使えばよいのである。

国語審議会は、世の中の流れをそのまま認めようとする傾向がある。

番組では、また研究者が出てきて、「とんでもない」は「とでもない」が語源かも知れないと言っていたが、語源を言い出したらキリがない。それなら私だって少しは考える。

「飛んでもない」→仮に私(人類)が空を飛べたとしてもそんなことはありえない。
「豚でもない」→豚が木に登るほど(誉めれば豚も木に登る)誉められるようなことはしていない。

まあ、使う人の気持ちはわかるので、その気持ちまでは否定するつもりはないが、私は使わない。人に誉められたりねぎらいの言葉をかけられたら、「とんでもございません」などと心にもないことを言うよりも、「(そのように言ってくださり)ありがとうございます」と素直に返すほうがよい。「私にとっては朝飯前」と言いたい気持ちを押さえて・・・。

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ことば」カテゴリの記事

コメント

とんでもございませんも、日本語になりつつある訳ですね、、
参考になりました、、

ちなみに、数年前ですが、若い人が誤用と気づかない「すいません」も日本に認められつつある事実(新しい電子辞書には掲載されていた!)ので腰を抜かした記憶があります、

投稿: トンロー | 2010年6月13日 (日) 08時35分

トンローさん
私の持っている辞書は「すいません」ではなく「す(済)みません」でした。

会話中に喫煙者がたばこに火をつける。
非喫煙者「ぼくは煙草が嫌いなんだ」
喫煙者「ああ、どうもすいません」
非喫煙者「すってるじゃないか!」

投稿: 吉田孝 | 2010年6月13日 (日) 12時02分

とんでもございませんなんて日本語、とんでもないはずなんですが、実際、使われますね。
「とんでもありません」

大辞泉には、「敬語の指針」の引用に添えて、
----「とんでも」に「ない」の付いた形だが、「とんでも」が単独で使われた例はなく、「とんでもない」で一語と見るのがよい。とすれば、「ない」を切り離して「ありません」「ございません」と置き換えて丁寧表現とするのは不適切で、丁寧に言うなら「とんでもないことです」「とんでもないことでございます」「とんでものうございます」と言わなければならない。しかし、最近は「とんでもありません」「とんでもございません」と言う人が多くなっている。
http://dic.yahoo.co.jp/dsearch?p=%A4%C8%A4%F3%A4%C7%A4%E2%A4%CA%A4%A4&stype=0&dtype=0
と書いてあります。

その割には、大辞泉にも大辞林にも、その意味として書かれている中に、謙遜の意図は読み取れないように思うのです。

投稿: compUT/OSer | 2010年6月13日 (日) 18時27分

「ございます」や「ございません」は若いときにはあまり使わない言葉ですね。
そういえば,ある学生がアルバイト先の居酒屋で電話を受けたとき,
丁寧に応対しようと「ただいま店長は外出中でございます」と言おうとして,
「ただいま店長は外出中でござる」と言ってしまったとか。

その話,作っただろうって? とんでもございません。

投稿: 北山敦康 | 2010年6月14日 (月) 20時12分

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