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阪急電車

自宅のある阪急「武庫之荘」から神戸線で「西宮北口」まで一駅乗り、そこで今津線「宝塚」行に乗り換え、一駅北にある「門戸厄神」駅で降りる。これが私の通勤経路である。

今津線は、阪神線と連絡している「今津」から「西宮北口」を経て「宝塚」までの南北に走っている路線である。路線図上は西宮北口で神戸線と交差していることになっているのだが、現在は西宮北口で路線が分断されている。西宮北口-宝塚間、西宮北口-今津間がそれぞれ別の路線として運行されている。

有川浩『阪急電車』(幻冬舎文庫・533円)

この本の前半は、阪急今津線・宝塚から-西宮北口方面行きのある電車に乗り合わせた人々の物語。駅名がこの各章のタイトルになっている。順に、宝塚駅、宝塚南口駅、逆瀬川(さかせがわ)駅、小林(おばやし)駅、仁川(にがわ)駅、甲東園駅、門戸厄神(もんどやくじん)駅、西宮北口。それぞれの章が独立した出会いや別れの物語なのだが、登場人物が少しずつ交差している。

そしてこの本の後半は、前半の約半年後の話で、前半とは逆に西宮北口駅から宝塚駅までが章のタイトルなっている。同じ電車に前半と同じ登場人物が乗車するのだが、出会いが恋に発展したり、別れが新しい出会いを迎えたりと、それぞれの登場人物が少し幸せになり、また少し強くなっている。ハッピーエンドなのだが、少しも不自然さがなくなんとも爽やかで読後感がよい。

毎日の通勤で目にする電車の中の光景が文章のはしばしに出てくるし、私の勤める大学の学生らしいカップル、その近くにあるたぶんあの高校の女子生徒、そして小林駅近くにあるあの女子小学校の児童も登場する。物語がとても身近に感じられると同時に、若いということが少しうらやましくも感じられる。

2008年に単行本が出たが、最近文庫化された(私はたいていの本は文庫が出てから買って読む)。来年には映画化されるそうだ。

なお、「阪急電車」「阪神電車」のように社名に「電車」をつけるのは関西独特の言い方のようである。東京には「西武電車」「京王電車」「東急電車」のような言い方はない。

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