龍馬
昨日の朝日新聞朝刊のオピニオン欄「異議あり」は高知出身の精神科医の野田正彰氏。龍馬ブームについて語る。
「龍馬とは青春像そのものです。30代前半で暗殺されてしまって中年以降がない」として、企業経営者などが龍馬にしがみつくのは「成熟拒否」だと断言している。
「本来、人は年齢を重ねると成熟していかないといけない。なのに青春像にしがみつくのは、申し訳ないですが、人格的に未熟だからです。なぜ経営者は成熟の歌を自分の部屋に飾らないのか。彼らが龍馬にあこがれるとしたら、それは龍馬という青春にこだわることであり、幼稚さの表れでしょう」
「理想化した人物と世俗的な自分の生き方が、一人の人間のなかでファンタジーのまま共存する。人格の自然な統合ができません」
たしかにそうだなあと思う。私は、龍馬は好きなのだが(たぶん司馬遼太郎版の影響。それに高知が好き)龍馬を自分と重ね合わそうする政治家や企業人が大嫌いだ。なぜかわからなかったのだが、野田氏の話で納得できた。そういえば、世俗的な人ほど「龍馬」をよく口にする。
大河ドラマ「龍馬伝」に対しても手厳しい。
「龍馬の業績に大筋は乗っているように見せて、内容はフィクションだらけ」
「地元の記者に聞いたら、高知では『史実と違いすぎる』と覚めているそうです」
「坂本龍馬というイメージが過去にどう利用されたきたかをちゃんと知ってほしい。小説やドラマで切り取ったり、危機の時代になるとナショナリズムをあおるような形で、フィクションもないまぜに語られたりする。今もそうではないですか」
私は、大河ドラマははじめから歴史の加工だと思っているので、フィクションにここまでかみつかなくてもいいじゃないかと思わなくもない。ただ、すぐに龍馬かぶれする軽薄な政治家や企業人が多いのは確かである。だからこういった発言も必要だ。それでうまくバランスがとれている。こういう発言が出せるのは、日本が健全な国である証左でもある。
ところで野田正彰氏は関西学院大学教授という肩書きだが、学部に属さない学長直属ということになっている(ニュース・キャスターの村尾信尚氏も同じ)。関学のどこで何をしているのかさっぱりわからない。
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