公務員宿舎
今から18年前、地方の国立大学(助教授)から国の研究所に転任した。「国のために働きたい」と本気で思ったからである(若さによる過信もあったが)。高校、中学校に入学したて、小学生の子もいたので単身赴任だった。給与は教育職から研究職への転任だったのでガクンと落ちた。諸手当(地域手当等)を入れてやっと元通りというところだった。
とりあえず住む家がなかったので、公務員宿舎を希望したら、国立大学の単身赴任者用の宿舎があてがわれた。6畳一間、キッチン、トイレ、風呂場が共用で「宿舎」というより寮のようなものだった。40男にとっては「ミジメ」きわまりない生活だったが、家賃が安いのでがまんした(ミジメは学生時代から慣れている)。二重生活なので経済的には大変だったし、民間のアパートを借りて家賃を払うゆとりがなかったのである。
そのうち、娘や母親といっしょに住むことに(住まねばならなく)なった。少し広い公務員宿舎を希望したら、東京都の一番北にある3LDKの宿舎があてがわれた。当時で築30年くらいたっていたが、内装はきれいにしてあり場所も良かったので満足していた。宿舎費は当時で36000円だった。民間のアパート・マンションなどと比較すると格安であろうが、依然として二重生活だった私には苦しかった。民間の宿舎を借りて住めと言われたら途方にくれていた。こういう宿舎があったからこそ、安心して仕事ができたのである。もちろんこのような宿舎が与えられていることを公務員の当然の権利だと思っていたわけではない。高い家賃を払って生活している人も知っていたので、多少のうしろめたさは感じていた※。
私と同じような条件で、中央の機関で働いている国家公務員は今でもいる(そういう人を知っている)。私のように都内の宿舎があてがわれればいいほうで、千葉県や埼玉県から2時間近く時間をかけて通勤する人もいる。「公務員宿舎は必要ない」という議論は暴論である。適切な質・数の公務員宿舎が必要である。質と量を問題にすべきなのである。
公務員宿舎が25パーセント削減が発表された。削減はよいとしても本当に必要な宿舎もある。企業にも宿舎はある。宿舎がない場合には一般の住宅借り上げて社員用宿舎にしている企業もある。マスコミ関係者はごく一部のことをとりあげて「公務員宿舎廃止」を主張する※※。本当に公務員の給与水準や仕事の質・量が分かって言っているのだろうか(たいていは激務である。あまりの激務に体をこわす人もいる)。政治や社会全般に対する不満が積もってくると、攻撃の矛先をどこかに向けることになる。「公務員バッシング」はその一つであるようだが、そんなことをしても何も解決しないと思うのだが。
※その宿舎には7年ほど住んだが、出るときに現状回復費として80万円ほど払った。7年も住めば、内装、キッチン、風呂のステンレスなど全部一律張り替えとなるので、どんなに大切に使ってもこのくらいはかかるそうだ。ショックだった。
※※推測だが、マスコミ関係者や、マスコミに登場して公務員バッシングをしている評論家諸氏は、平均的な公務員より高水準の生活をしている。
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