大学生数学基本調査
日本数学会が「大学生数学基本調査」の結果を発表した。その要旨は次の通り。
問1では「平均の定義と定義から導かれる初歩的結論」、「少し複雑な命題 の論理的読み取り」のどちらも誤答率が高く、論理を正確に解釈する能力に問題があることを示しています。
問2。記述式入学試験を課している難関国立大学の合格者を除くと、「偶数と奇数の和が奇数になる」証明を明快に記述できる学生は稀、という結果になりました。二次関数の性質を列挙する問題では、意味不明の解答が多く、準正答のなかにも、すでに挙げた性質と重複する性質を再度挙げる解答が目立ちます。論理を整理された形で記述する力が不足しています。
問3では、平面図形を定規とコンパスで作図するということが何を意味するのか理解していない解答が多く見られました。高校までの教育で、こうしたことがきちんと教えられていない可能性もあります。
定点観測の一環としてこのような調査を継続しデータを集積する意義はある。しかし、次のような提言が意味があるとは思えない。それにあまり数学者らしくない提言だ。
中等教育機関に対して:充実した数学教育を通じ論理性を育む。証明問題を解かせる等の方法により、論理の通った文章を書く訓練を行う。
大学に対して:数学の入試問題はできるかぎり記述式にする。1年次2年次の数学教育において、思考整理と論理的記述を学生に体得させる。
数学の学力を含め、大学生の学力が低下しているのは間違いない。しかし、同年代に占める大学生の比率が高くなれば、その学力が低下するのはある意味で当たり前のことである※。大学人は、それを中学校や高校の教育のせいにしたり入試にせいにする前に、まず現実として受け止める以外にない。重要なことは、その現実を受け入れ、そこを出発点として、これから自分がどのような教育をするかを考えることだ。
ただ、これはなかなか難しいことだ。私もついつい自分の教育力のなさを学生の能力や学生が過去に受けた教育のせいにしてしまう。決してしてはいけないことだ。肝に銘じよう。
※大学生の比率の増加に伴い、人口に対する大学教員の比率も当然高くなっている。ということは・・・・恥ずかしくて口に出せない。
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