『現代教育科学』最終号
月刊誌『現代教育科学』(明治図書)最終号(3月号)が届いた。通巻666号、53年と6ヶ月(途中臨時号も出ている)目である。
1958年創刊だが、私が講読をはじめたのは、教育研究の道を歩き始めた1970代である。その中で最も印象に残っているのが、1980年頃のいわゆる「出口」論争である。斎藤喜博の「森の出口」の授業をめぐる吉田章宏氏と宇佐美寛氏の間の論争である。
斎藤喜博氏は当時の教育界では神様のような存在だった(私もそのように思っていた)。その実践に関する吉田氏の一文を宇佐美寛が批判したことからはじまった論争だった。といってもきちんと両者が切り結んだ論争にはなっていたわけではない。。宇佐美氏が相手の文章をきちんと引用して批判・反批判を続けたのに対して、吉田氏はまるでちゃかしたような駄文を続けるだけであった(私は吉田氏にずいぶん腹をたてたものだった)。論争の結末は見えていた。結局、吉田氏は何もまともに答えないまま論争から逃げたのである。
この論争に実践者として参加したのが向山洋一氏だった。この頃の向山洋一氏の文が私は好きだった。その後は皆さんの知ってらっしゃる通りである。
その後もずっと講読を続けてきたが、ここ10年ほど何となくつまらなくなった。宇佐美寛氏の連載、あるいは自分の関心のある特集の時だけ手にとって読むくらいになっていた。
残念なことが一つ。私が講読している間、音楽教育に関わる論文が一度も掲載されなかったことである。このような雑誌に書ける書き手がいないということか。音楽教育界の力量の問題である。・・・・・この最終号には、当の斎藤喜博がその時にどういう行動をしたかを江部編集長が書いている。
今回この雑誌が廃刊になるのは、採算がとれないかららしい。つまり、教育界の人間がこのような教育雑誌を読まなかったということになる。それは、ある意味では教育界の危機でもある。
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