「駆け込み」退職に対する批判は筋違い
文部科学大臣が「自己都合で早期に辞めるのは、決して許されない。最後まで勤め上げてもらいたい」と述べたそうだが、これは「自己都合」という言葉の使い方を誤っている。自己都合退職というのは、定年まで勤めず自分の都合で辞めることだが、普通は定年退職より待遇は不利になるのだ。
私自身は4年前に定年を7年残して国立大学を退職した。国立機関の職員として27年勤めたが、計算をすると同じ27年勤めて定年退職するより退職金が不利になることがわかった。それは「自己都合退職」に相当するからである。不利を承知で早期退職するのが自己都合退職である。
今回の場合はこのケースとはまったく異なる。普通は最後まで勤め上げたので定年退職ということになり有利になるのだが、今回は早期に辞めた方が有利になるのである。これはもう、退職勧奨、つまり「早く辞めなさい」と勧めているようなものである。もちろん制度設計のミスだろうが、制度を変えられない限り早期退職は当然である。むしろ逆に多くの人がそのような理不尽な制度を受け入れて働くほうが不思議である。
辞めないで続けるのは、善意に違いない。とくに教師である公務員は学期の途中で児童・生徒を放り出すということになるので、決断できないのも当然である。しかし、一方では社会の目もある。ただでさえ公務員に対する批判の目が厳しい中、いわゆる駆け込み退職者にはさらに厳しい目が向けられるだろう。それが、理不尽な制度を受け入れている理由ではないだろうか。長い目で見れば、このような理不尽な制度を受け入れるのは国民のためにも教育のためにもならない。がまんするだけでは、何も改善されないからだ。
もう一つ突っ込んで考えてみると、退職金そのものを突然カットすること自体が極めて問題である。私は、退職金というのは言わば給与の後払い、民間企業で言えば会社に給与の一部を預金しているようなものだと考えている。公務員も退職金をある程度計算しながら日々の暮らしを送っている。それがカットされるということは、貯金が大幅に目減りするようなものである。退職金カットはほとんど事後法に近い。本当はもっと闘ってほしいのだが、公務員には争議権も与えられていない。
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