稼がない男
西園寺マキエ『稼がない男。』同文館出版、2013
以前、「パートナー婚」というカップルの形があること、そしてその当事者が自分の知り合いだったことを知って驚いたことがあるが、それと同じくらいの衝撃だ。しかし、読了後は爽やかさばかりが残る。
フリーターとフリーライターのカップルの17年間(出版後も同じ状況らしいからもう20年以上)を女性の側から書いている。
この本の主人公であるヨシオ君も、実は私のよく知っている男だ。東京時代に知り合った。よく話もしたし、いっしょに酒も飲んだ。彼は30代前半だったと思うが、頭は切れるし話も面白かった。
ただ、30過ぎても定職につかない彼のことを随分心配した。その彼から彼女といって紹介されたのが著者のマキエさんだ。魅力的な女性だった。彼女の存在を知ってますます「定職につけよ」と思ったし、実際にそう言ったような気もする。
私が東京を離れてからは、彼のことは頭の中から離れていたのだが、「稼がない男」とは彼のことだということを教えてくれた人がいて、読んでみることにした。彼は定職につけないのではなく、自分の意思でつかなかったのだ。そしてそれが彼の生き方でもあったのだ。
「時給は安いけどなんたってラクだもん。会社勤めとかのストレスに比べたらぜんぜんたいしたことないよ」
「誰かが儲かるってことは、どこかで誰かが儲からなくなってるわけさ」
そんな彼と20年以上もつきあっている(これからもずっとつきあっていくのだろう)マキエさんも素敵だ。もう二人とも50 歳を超えているはずだ。
幸せの形は一つではないということを若い(相対的にという意味で)二人に教えられた。著者のマキエさんの筆力もすばらしい。
才能のある女性は男を養える時代なのでしょう。それも良いのかも。
私の良く知っている二組の夫婦がいます。一組の奥さまは40代の学校の先生。旦那は元営業マン、今は塾の講師。旦那は自分の給料は全部仕事の経費で使い、一銭も家に入れません。もう一組の奥さまは50前後、非常勤の看護婦さん。旦那は駐車場などの非常勤。旦那は自分の給料は全部パチンコで使って亡くなっています。二組とも結構良い仲のようです。本になりますね。
私のような昔モノには本当に不思議です。
投稿: tsuguo-kodera | 2017年10月25日 (水) 12時15分