« 2020年6月 | トップページ

将棋の未来

藤井聡太王位(棋聖との二冠)に豊島将之竜王が挑戦した王位戦七番勝負が藤井王位の4勝1敗で終了した。平行して豊島叡王(竜王との二冠)に藤井二冠が挑戦する叡王戦五番勝負も行われていて、こちらは現在2勝2敗のタイになっており、9月13日に第5戦が行われて決着する。

藤井聡太二冠の活躍によって、将棋が世の中から注目されるようになった。これはとてもすばらしいことだと思うが、危機感も覚える。

将棋のタイトル戦は、一部を除いては全局が Abema TVによって生中継されている。王位戦は1局が2日間にわたる長い対局である。全部を観戦するわけにはいかないので、ときどき覗いてみていた。

中継では、 コンピュータソフトによるその局面での形勢判断と最善手が示されている。現局面での両者が勝利する確率としてパーセンテージで示される。例えば 50% 50%ならば互角、70% 30% とでれば70%のほうが有利であることを示す。ただし、この確率は対局者がこれ以降最善手を指し続けることが前提で、悪手を指せば確率は下がるし、逆転することもある。

コンピュータがほぼ最善手を示していることは間違いない。一手指したあと、評価値がめまぐるしく動くがこれは読み(探索)が深くなるので判断がより正確になっていくことにあらわれである。コンピュータがどれだけ深く読むかは、コンピュータのソフト(プログラム)とハード(機械)の性能によるが、かなり性能のよいものを使っているはずである。

藤井の強さの一つは、コンピュータが示す最善手との一致率が高いことにあらわれている。もちろん100%コンピュータ通りというわけではない。そう指さないで不利になることもある。しかし、相手もミスをするので結局ミスが少ないほうが有利になる。藤井は、対局見守るプロ棋士たちが予想しなかった手を指すことがよくあるが、その手がコンピュータ示した最善手であることがよくある。

実況中継の視聴者は、このコンピュータよる形勢判断による評価値(パーセンテージ)と最善手、そして実際に対局者が指した指し手を見ながら勝負の行方を見守ることになる。このような将棋の観戦の仕方をするようになったのは、実はごく最近のことである。

一つは、生中継で勝負を見ることができるようになったことである。将棋の生中継を見ること自体がこれまでは考えられないことであった。将棋の多くの棋戦は持ち時間が3時間以上、タイトルの番勝負ともなると、8時間、9時間になる(だから2日制をとっている)。このためにあるテレビチャンネルを独占して使用することはできない。現在、テレビ放送では、NHKのEテレと有線テレビ(CS)の囲碁将棋チャンネルが棋戦を主催して放映しているが、これらは持ち時間が短く(10分~20分)であり、また放送時間に枠内に入るように録画である。しかし、 Abema TV などのインターネットによる中継によって、長時間の生中継がj可能になった。これは将棋ファンにとってはありがたいことである。

もう一つは、先述したコンピュータ・ソフトの影響である。将棋のソフトはパソコンの登場と同時に開発がはじまったが、最初の頃は弱かった。私の記憶では20世紀の間は弱かった。どのくらい弱かったというと、私が勝てるくらい弱かったのである。ところが21世紀になると、ソフトがアマチュアの有段者の力を持つようになり、私ごときではとても勝てなくなった。ほどなくして、プロ棋士と対等にたたかえるようになった。2012年に、米長永世棋聖がコンピュータ・ソフトに敗れたのが象徴的な出来事であった。コンピュータ・ソフトはさらに開発がすすみハードの性能が高くなったこともあって、2017年には佐藤天彦名人がソフトに連敗するに至って、プロ棋士もソフトに勝てないことが明らかになった。

藤井はコンピュータも使いこなすようで、市販されるもっとも性能のよいCPUを選んでパソコンを自作し、それにソフトを入れて将棋の研究をしているようである。もともと強い人が最強のツールを使っているのだから、他の人が叶わないのも当然だとも言える。藤井に限らず、将棋界はコンピュータ・ソフトによる研究が先行し、人間は正解をコンピュータ・ソフトに教えてもらっているという状況になっている。

一方で観戦しているファンも、コンピュータの示す最善手や評価値をみている。ファンの関心は①コンピュータが示す最善種は何か②棋士がその最善手を指すか③評価値がどのように動いていくかということになる。これならば将棋をまったく知らなくても、ある程度は楽しむことができる。例えば将棋を知らない藤井ファンもいて、その人はコンピュータの評価値だけを見ているようだ。将棋はまったく指さないがプロの将棋観戦を楽しむ「見る将」が増えてきたのもこのような理由による。

このようにコンピータに完全に席捲されてしまった将棋に未来があるのか。幸か不幸か初手から最終手まですべてを指し示すようなソフトは登場していない。いかに性能のよいコンピュータでも、すべてを読み切ることは今のところはできないからである。しかし、近い将来必ず結論が出る。
そのときに将棋がどうなるのか。そこに興味はあるが、たぶん私はこの世にはいない。

| | コメント (0)

大学人の差別ツイート

広島大学助教の差別ツイート問題。
言語道断だし、自分の出身大学にこのような教員が勤めていることが恥ずかしい。
だから、この人の言動は批判されるべきだ。また、大学としても何らかの責任ある対応をすべきだ。
ところが、このことについてある団体を通じて署名依頼が来た。その内容は次の通り
・・・・・・・・・
私たちは広島大学と伊藤氏が非常勤講師を務める上記の大学に対して、以下のことを求めます:
1) 伊藤氏を解雇し、このようなことが二度と行われないように学内で差別禁止ルールを定め、再発防止策をとること。
2) 伊藤氏の講義や学内その他の場において差別発言が行われてこなかったかを調査すること。
・・・・・・・・・・
この署名には私は応じない。
学外団体が一大学に対して教員解雇の圧力をかけることには反対だからである。
一教員に大学の諸規定に違反する行為があれば、大学がその規定に基づいてなんらかの処分をくだすのは当然である。しかし、外部からの圧力を理由にした一教員の解雇などは絶対にあってはならない。
このようなことが前例となれば、大学の人事に対する外部の圧力を認めることになる。また大学当局が気に入らない教員を排除するのに外部の圧力を口実にすることも可能になる。
目的がいくら正しくても、その手段が節度を超えてはならない。

| | コメント (0)

« 2020年6月 | トップページ