将棋の未来

藤井聡太王位(棋聖との二冠)に豊島将之竜王が挑戦した王位戦七番勝負が藤井王位の4勝1敗で終了した。平行して豊島叡王(竜王との二冠)に藤井二冠が挑戦する叡王戦五番勝負も行われていて、こちらは現在2勝2敗のタイになっており、9月13日に第5戦が行われて決着する。

藤井聡太二冠の活躍によって、将棋が世の中から注目されるようになった。これはとてもすばらしいことだと思うが、危機感も覚える。

将棋のタイトル戦は、一部を除いては全局が Abema TVによって生中継されている。王位戦は1局が2日間にわたる長い対局である。全部を観戦するわけにはいかないので、ときどき覗いてみていた。

中継では、 コンピュータソフトによるその局面での形勢判断と最善手が示されている。現局面での両者が勝利する確率としてパーセンテージで示される。例えば 50% 50%ならば互角、70% 30% とでれば70%のほうが有利であることを示す。ただし、この確率は対局者がこれ以降最善手を指し続けることが前提で、悪手を指せば確率は下がるし、逆転することもある。

コンピュータがほぼ最善手を示していることは間違いない。一手指したあと、評価値がめまぐるしく動くがこれは読み(探索)が深くなるので判断がより正確になっていくことにあらわれである。コンピュータがどれだけ深く読むかは、コンピュータのソフト(プログラム)とハード(機械)の性能によるが、かなり性能のよいものを使っているはずである。

藤井の強さの一つは、コンピュータが示す最善手との一致率が高いことにあらわれている。もちろん100%コンピュータ通りというわけではない。そう指さないで不利になることもある。しかし、相手もミスをするので結局ミスが少ないほうが有利になる。藤井は、対局見守るプロ棋士たちが予想しなかった手を指すことがよくあるが、その手がコンピュータ示した最善手であることがよくある。

実況中継の視聴者は、このコンピュータよる形勢判断による評価値(パーセンテージ)と最善手、そして実際に対局者が指した指し手を見ながら勝負の行方を見守ることになる。このような将棋の観戦の仕方をするようになったのは、実はごく最近のことである。

一つは、生中継で勝負を見ることができるようになったことである。将棋の生中継を見ること自体がこれまでは考えられないことであった。将棋の多くの棋戦は持ち時間が3時間以上、タイトルの番勝負ともなると、8時間、9時間になる(だから2日制をとっている)。このためにあるテレビチャンネルを独占して使用することはできない。現在、テレビ放送では、NHKのEテレと有線テレビ(CS)の囲碁将棋チャンネルが棋戦を主催して放映しているが、これらは持ち時間が短く(10分~20分)であり、また放送時間に枠内に入るように録画である。しかし、 Abema TV などのインターネットによる中継によって、長時間の生中継がj可能になった。これは将棋ファンにとってはありがたいことである。

もう一つは、先述したコンピュータ・ソフトの影響である。将棋のソフトはパソコンの登場と同時に開発がはじまったが、最初の頃は弱かった。私の記憶では20世紀の間は弱かった。どのくらい弱かったというと、私が勝てるくらい弱かったのである。ところが21世紀になると、ソフトがアマチュアの有段者の力を持つようになり、私ごときではとても勝てなくなった。ほどなくして、プロ棋士と対等にたたかえるようになった。2012年に、米長永世棋聖がコンピュータ・ソフトに敗れたのが象徴的な出来事であった。コンピュータ・ソフトはさらに開発がすすみハードの性能が高くなったこともあって、2017年には佐藤天彦名人がソフトに連敗するに至って、プロ棋士もソフトに勝てないことが明らかになった。

藤井はコンピュータも使いこなすようで、市販されるもっとも性能のよいCPUを選んでパソコンを自作し、それにソフトを入れて将棋の研究をしているようである。もともと強い人が最強のツールを使っているのだから、他の人が叶わないのも当然だとも言える。藤井に限らず、将棋界はコンピュータ・ソフトによる研究が先行し、人間は正解をコンピュータ・ソフトに教えてもらっているという状況になっている。

一方で観戦しているファンも、コンピュータの示す最善手や評価値をみている。ファンの関心は①コンピュータが示す最善種は何か②棋士がその最善手を指すか③評価値がどのように動いていくかということになる。これならば将棋をまったく知らなくても、ある程度は楽しむことができる。例えば将棋を知らない藤井ファンもいて、その人はコンピュータの評価値だけを見ているようだ。将棋はまったく指さないがプロの将棋観戦を楽しむ「見る将」が増えてきたのもこのような理由による。

このようにコンピータに完全に席捲されてしまった将棋に未来があるのか。幸か不幸か初手から最終手まですべてを指し示すようなソフトは登場していない。いかに性能のよいコンピュータでも、すべてを読み切ることは今のところはできないからである。しかし、近い将来必ず結論が出る。
そのときに将棋がどうなるのか。そこに興味はあるが、たぶん私はこの世にはいない。

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女性棋士の活躍

(朝日電子版より引用)
囲碁の藤沢里菜女流四冠(21)が24日、第45期名人戦挑戦者決定リーグ戦(朝日新聞社主催)の出場をかけた最終予選準決勝で、中野泰宏九段(42)に269手で黒番中押し勝ちし、女性初のリーグ入りまであと1勝に迫った。決勝の相手は若手の強豪、一力遼八段(22)。来月18日に東京で打たれる。

国内のプロ棋士435人が参加する名人戦予選で6連勝し、女性では20年ぶりに最終予選に進出。そこからさらに2連勝して決勝に進出した。女性の最終予選の決勝進出者は、名人、棋聖、本因坊戦の三大リーグを通しても、2011年棋聖戦の鈴木歩(あゆみ)七段(36)以来2人目。鈴木は決勝で敗れてリーグ入りはならなかった。

芝野虎丸名人(19)への挑戦権を争う名人戦リーグの枠は9人。リーグの座は一流棋士の証しとされる「黄金のイス」と呼ばれ、張栩(ちょうう)前名人(39)と、井山裕太四冠(30)ら前期リーグ成績上位者5人がシードされ、残る3枠を予選で争う。

女性初のリーグ入りをめざす藤沢は「あと1勝という実感はない。決勝の相手の一力さんは、修業時代に同じ道場で打っていて、ほとんど勝てませんでした。今度は自分の力を出し切ってがんばりたい」と話した。

(引用おわり)

 

囲碁と将棋ではプロの基準が少し違うので(囲碁は初段、将棋は四段)、一概に比較はできないが、囲碁ではこのように女性の棋士が一般棋戦で堂々と活躍している。将棋界には女流棋士はいるが、男性も含む一般棋戦に制限なしで出られる女性のプロ棋士は残念ながらまだ誕生していない。蛸島彰子さん、林葉直子さん、里見香奈さんなど、何人かが挑戦したが一歩届かなかった。

男脳、女脳などというものないそうだ。だとすれば、女性にとっては囲碁のほうがよい環境だということになるのだろう。

アマチュアでも将棋を指す女性はまだまだ少ない。私自身女性と碁を打った経験はあるが、将棋を指した経験はない。

生きている間に、囲碁の女性タイトル保持者、そして将棋の女性棋士の誕生を見たい。

 囲碁の藤沢里菜女流四冠(21)が24日、第45期名人戦挑戦者決定リーグ戦(朝日新聞社主催)の出場をかけた最終予選準決勝で、中野泰宏九段(42)に269手で黒番中押し勝ちし、女性初のリーグ入りまであと1勝に迫った。決勝の相手は若手の強豪、一力遼八段(22)。来月18日に東京で打たれる。

 国内のプロ棋士435人が参加する名人戦予選で6連勝し、女性では20年ぶりに最終予選に進出。そこからさらに2連勝して決勝に進出した。女性の最終予選の決勝進出者は、名人、棋聖、本因坊戦の三大リーグを通しても、2011年棋聖戦の鈴木歩(あゆみ)七段(36)以来2人目。鈴木は決勝で敗れてリーグ入りはならなかった。

 芝野虎丸名人(19)への挑戦権を争う名人戦リーグの枠は9人。リーグの座は一流棋士の証しとされる「黄金のイス」と呼ばれ、張栩(ちょうう)前名人(39)と、井山裕太四冠(30)ら前期リーグ成績上位者5人がシードされ、残る3枠を予選で争う。

 女性初のリーグ入りをめざす藤沢は「あと1勝という実感はない。決勝の相手の一力さんは、修業時代に同じ道場で打っていて、ほとんど勝てませんでした。今度は自分の力を出し切ってがんばりたい」

 囲碁の藤沢里菜女流四冠(21)が24日、第45期名人戦挑戦者決定リーグ戦(朝日新聞社主催)の出場をかけた最終予選準決勝で、中野泰宏九段(42)に269手で黒番中押し勝ちし、女性初のリーグ入りまであと1勝に迫った。決勝の相手は若手の強豪、一力遼八段(22)。来月18日に東京で打たれる。

 

 国内のプロ棋士435人が参加する名人戦予選で6連勝し、女性では20年ぶりに最終予選に進出。そこからさらに2連勝して決勝に進出した。女性の最終予選の決勝進出者は、名人、棋聖、本因坊戦の三大リーグを通しても、2011年棋聖戦の鈴木歩(あゆみ)七段(36)以来2人目。鈴木は決勝で敗れてリーグ入りはならなかった。

 

 芝野虎丸名人(19)への挑戦権を争う名人戦リーグの枠は9人。リーグの座は一流棋士の証しとされる「黄金のイス」と呼ばれ、張栩(ちょうう)前名人(39)と、井山裕太四冠(30)ら前期リーグ成績上位者5人がシードされ、残る3枠を予選で争う。

 

 女性初のリーグ入りをめざす藤沢は「あと1勝という実感はない。決勝の相手の一力さんは、修業時代に同じ道場で打っていて、ほとんど勝てませんでした。今度は自分の力を出し切ってがんばりたい」と話した。

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切手問題

数学の未解決の問題に「郵便切手問題」というのがあるらしい。

切り離されていない、横に1列に並んだn枚の切手を、折りたたんでいって、切手1枚のサイズにまで折りたたむ。このとき、左端の切手が一番上になるような折りたたみ方は何通りあるか?

わたしなんぞは慌て者だから、すぐ次のような結論を出す。

切手はn枚だから、折り目はn-1。しかし一番最初の折り目は山折りしかできないから、残りの折り目はn-2。それぞれが山折りまたは谷折りができるので答えは、2^(n-2)・・・(^は累乗を表す)。

n=4まではたしかにこのようになる。しかし、5枚になるともういけない。山・谷は同じでも違う折り方でできるからである。例えば、2枚目から、山、谷、山と折って最後に山折しようとすると(やってみてください)、5枚目を4枚目の下に折り込む場合と、1枚目の下に折り込む場合がでてくる。つまり山か谷かだけでは解決ができないのである。結局、5枚の場合は10通り、6枚の場合は24通りになる。6枚までは自分でやってみたが、それ以上は手に負えない。ある枚数までは明らかになっているようだが、nの式で表すことはできていないらしい。

コンピュータに試行させればnが有限なら(例えば「1万枚なら何通りか」という場合)答えが出せるのかもしれない。しかし、nの一般式で表すことはできないということなのであろう。簡単そうなのに未解決。不思議である。

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今日でお別れ

今日は高知に来ている。昔お世話をしたことのある少年少女合唱団の定期演奏会を聴くためである
第1期から8期までお世話したのだが、今年は27回目の定期演奏会ということだ。楽しみである。
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突然だが、趣味の一つである将棋を指すのも棋士を応援するのも終わりにしようと思う。将棋連盟会長である米長邦雄永世棋聖が、さしてスペックもよくないコンピュータ・ソフト「ボンクラーズ」に簡単に負けてしまったからである。You-Tube にその様子が出ている。

自転車や自動車が生まれても陸上競技に価値があるのは、それが「人間の体力」の限界に挑戦する競技だからである。しかし「コンピュータが生まれても、将棋は「人間の知力」の限界に挑戦するゲームだから将棋には価値がある」とは言えない。コンピュータそのものが人間の知力の結晶だからである。知の限界に挑戦するためにコンピュータを使ったか使わなかったで価値が高くなったり低くなったりするわけではない。研究者が情報収集や情報の整理にパソコンやインターネットを使ったからといって、研究の価値が下がるわけではない。

円周率を手計算して100桁、1000桁導き出し丸暗記して暗唱してみせても、変人扱いはされてもそれがほめたたえられるわけではない。コンピュータにたずねたら最善手がわかることを人間が長時間考えるのは知力の無駄遣いでしかない。

3級程度の実力の人が開発したソフトに仮にもかつて名人を名乗った人が負けるのでは、遊びとしては生き残っても、プロの存在価値はないに等しい。

私にとって、将棋は子どもの頃からのロマンの一つだった。時間(勉強)もお金(本)もつぎ込んだ。しかし、その将棋に今日でお別れ。

(一昨日書こうとしていたこととは違います)

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インターネット将棋道場

昨日はじっと自宅で。
学生のレポートを読んだり、原稿の校正をしたり、メールを読んだり書いたり、楽器をいじってみたり・・・。30分くらいで飽きるので、別のことをする。

その間に、久しぶりにインターネットの将棋道場でヘボ将棋を指した。道場ではかなり下位のクラスであるが、それでも負けたり負けたり勝ったり。そのヘボ将棋の1局をヘボな自戦解説でお見せする。

吉田の自戦

なお、この将棋には、柿木義一さんのKif for Flash を使っている。その実験でもある。

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将棋・竜王戦

将棋の第22期竜王戦は、渡辺明竜王が挑戦者の森内俊之九段(第18代永世名人資格者)を4勝0敗で退け竜王位を防衛した。これで渡辺明竜王は竜王戦6連覇。竜王戦は読売新聞の主催で最も賞金額の大きい棋戦である。

インターネットの竜王戦サイトで、棋譜を見ることができる。このサイトには丁寧な解説がついている。私の棋力では分からないことがたくさんあるのだが、それでも渡辺竜王の強さはわかる。

ただ、渡辺竜王は名人挑戦につながる順位戦ではまだB級1組。名人に挑戦できない。A級にあがってそのリーグの優勝してはじめて羽生善治名人に挑戦できる。それが楽しみなのだが、もう少し時間がかかりそうである。

ああ、こんなことをしている場合ではない。原稿が2つ・・・

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どうぶつしょうぎ

「どうぶつしょうぎ」のことが話題になっている。
将棋の女流棋士の北尾まどかさんが考案したそうだ。

将棋に比べると非常に簡単だが、実際にゲームをすると奥が深いらしい。
渡辺明竜王もブログで紹介している。

子どもが手軽に楽しめるゲームになるとよいのだが。
私も注文したところである。

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